NMR用極低温プローブの製作


   2005年1月11日 NMR用コンデンサの開発  by KOBA

はじめに

 現在私は研修の一環としてNMR用の極低温プローブの製作をおこなっている. このプローブは実績のあるもので,これまでに4セット製作されているが,私が製作するのは今回が初めてである. ここでは,プローブについて説明し,設計から製作までの過程について簡単に述べる.


プローブ

  1. プローブの構成

     大きく2つの部分により構成されている.

    • 可変容量コンデンサー部
       真空容器中の低温部に可変容量コンデンサーが設置され,回転軸により真空容器外でその容量を変える機構を持った部分である.

    • ゴニオメーター部
       測定する試料を中心として2方向に回転させる機構を持った部分で,主立った機構部品としてウォーム,ウォームホイール,ベベルギア などによ って構成されている.

  2. プローブの特長

     独自のコネクタを使用することで可変容量コンデンサー部を独立して取り外し可能とした.これにより実験中に着脱に時間の掛かるイン ジウムシ ールや試料を取り外すことなく共振回路のコンデンサー交換を可能にした.


プローブの製作

  1. 3次元CADによる設計

     設計には3次元CAD (Solid Works)を使用している.このCADは各部品間の干渉チェックや稼動範囲の確認をおこなうことが可能であり,今回の設計においてもこの機能を利用して部品間の干渉チェックをおこなった.

  2. 部品加工・組み立て

     部品の材料は真鍮,銅,ステンレス,テフロン,スタイキャストなどを使用している.
     部品は旋盤,フライス盤などを使用し製作した.
     こうして製作した各部品はネジ締結,はんだ付け,銀ロウ付け,接着などにより組み立てるが,NMR測定用マグネットのスペースが厳しいため個々の部品やその組み立てには精度が要求される.

  3. リークチェック

     リークチェックにはHeリークディテクターを使用する.
     リークチェックは全て組み上がってからではリーク個所の特定が困難になったり,修正不能になったりする場合があるためそのことを考慮し,部分毎に行う.また,このプローブは液体He温度以下で使用されるため,冷却される部分は常温によるリークチェックと併せて液体N2温度によるリークチェックを行う.


今後の課題

 これまでの改良,開発によりインジウムシールや試料を取り外すことなくコンデンサーの交換を可能にした. 次に求められているのは極低温下で使用する可変容量コンデンサーの高容量化であり,現在この問題に取り組んでいる.


このホームページについてのご意見は
koba@ufp.phys.nagoya-u.ac.jp までお寄せ下さい。

金工室の仕事に戻ります。