SIRIUSを紹介します

更新記録:11月28日、SIRIUSファーストライト情報掲載


 SIRIUSは南アフリカ望遠鏡用の観測装置です。このページはSIRIUSという装置の技術的な問題について公開します。

 SIRIUSは先に開発しているTRISPECから多くの教訓を得、短い開発期間で効率よく装置をまとめていることが大きな特徴です。当然ながら、TRISPECの開発で用いた周辺環境をそっくり利用できています。  SIRIUSもTRISPECも、大型の真空容器によって真空断熱し、内部を液体窒素温度程度に冷却した遮光箱を持っている点は全く同じです。従って、真空容器の作り方や内部遮光箱に搭載する光学装置の光軸の確保、冷凍機による受光素子の冷却、真空容器を保持する架台など、あらゆる点でTRISPECの経験や教訓を生かすことができました。

 SIRIUSの全景です。架台はTRISPECで用意したものを多少手直ししたものがそっくり使えました。

 SIRIUSは11月28日、南アフリカサザーランドの「南アフリカ望遠鏡」に搭載したファーストライトを成功させることができました。視野7.5秒角の赤外線JHK3バンドで見るタランチュラ星雲の星像が公開されています。
南アフリカでのファーストライトSIRIURを右後から見たところSIRIUSを前面から見たところ

 ファーストライトの映像はZ研のHPからいただきました。右下の金属軸が出ているフランジが入射口です。

 SIRIUSの本体はTRISPECと同じように、四角の枠と2枚の蓋という箱構造の真空容器です。四角の枠は570mmx420mmx240mmで、金工室の新潟フライス盤の加工領域に合わせたもので、全て手作りです。この加工には、更新されたばかりの新潟フライス盤が大活躍したのは言うまでもありません。特に、簡易NC機能は加工の効率を高め、概観の美しい仕上がりとなりました。NCサーボ機構が優秀であったために、Oリング溝の加工においても、溝底面の面粗さも十分確保されました。



関連サイト
Z研、SIRIUS


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SIRIUSの真空容器に用いたKN500(アルミ合金)について

8月21日公開



 本体の材質は、樹脂形成用アルミ金型・治具用として新しく開発された、KN500(三菱化学)を採用しました。このアルミ合金は、A5052とA7075の中間に位置するような機械的性質を持っており、切削性良好、真空容器としての信頼性も十分なものです。
 特筆すべきは、残留応力が極めて小さい事です。このことは、精密加工における加工精度を高いレベルで実現できることを意味しており、今回の加工においてOリング溝加工における終始点でのカッターマークが無視できる程度に小さかった事に反映されていると言えます。
 KN500のもう一つの特徴は、大きな形状の材料でも比較的安価に入手できることです。材料納入時に、あらかじめ適当な大きさに前加工してもらうことができるので、加工性が良いことと合わせて、従来のアルミ合金と比べ、加工コストも下げる事ができます。

 KN500は内部組織が微細且つ均質で、方向性がなく、ピンホール等の欠陥がないため、真空容器としても十分使えます。このことはTRISPECと今回のSIRIUSによっても確認されました。

 以下に、公開されている機械的性質の、KN500の他素材との比較です。

  アルミ合金参考
新規硬質軟質 亜鉛合金合成樹脂
KN500-FA7075-T651A5052-H112 S55CZASエポキシ樹脂
引張り強さ(kg/mm2)30521965265(目安値)
0.2%対力(kg/mm2)134274014-
伸び   (%)221026152-
硬さ  (HB)7314562180100(10)
縦弾性係数(kg/mm2)720073007200 210008100(500)
比重   (g/cc)2.72.82.7 7.96.9(1)
比熱  (Cal/g*℃)0.230.230.23 0.150.1-
熱膨張係数(x10-6/℃)23.523.323.5 11.727.4(50)
熱伝導度 (CGS)0.330.310.33 0.140.27(0.01)
切削性×
研磨性×
溶接性××
エッチング性×
放電加工性×
残留応力×

 以上のデータは金属プレス、1992年3月号からの出典です。