理学部技術部将来計画委員会報告
理学部技術部将来計画委員長
増田忠志(平成8年〜11年)
井上晶次(平成12年〜13年)
1. はじめに
理学部技術部の将来を検討するために平成8年度技術部運営委員会のもとに将来計画委員会を発足させた。技術部は、平成7年度に東京大学工学部の小島圭二教授より外部評価を受け、技術レベルの高さを評価して頂くとともに、将来に向けたアドバイスをいただきました。将来計画委員会では、理学部の大学院重点化に伴い、今後の理学部の研究教育に対応できる技術部をめざして検討してきた。その結果技術部組織の総合的な見直し提案を行ない、平成14年度には新たな技術部体制でスタートできる状況を迎えた。
2. 経過報告
平成8年度においては、理学部の大学院重点化に伴う理学部改革が行なわれ、委員会においては、将来の技術部を理学部の概算要求(資料1)としてまとめた。この研究技術開発センター案は技術革新に対応した独創的な装置開発をし、大学院重点化に対応した技官・大学院生の研鑚の場となることをめざしたものである。概算要求案の 作成に当たっては、分子科学研究所、核融合研究所、理化学研究所、筑波大学工作センター、大阪大学工作センター等、他大学や研究所の組織を参考にし、理学部独自の特徴を加えて作成した。これは、理学部将来検討委員会で検討され、平成8年度理学部概算要求として認められた。
平成9年度においては、大学院重点化に伴う大型予算要求案の検討を行なった。技術部の装置開発部門は、新規大型機械設備や更新の問題を抱えており、NC旋盤や立型フライス盤等の大型設備の充実が必要であることが検討された。また、装置開発部門の装置開発班と研究機器開発班との設備の効率的な運用のための将来計画が作成された。
平成10年度〜11年度においては、理学部技術部発足後の見直し点に付いて検討した。以下に、今後、技術部が検討課題を示した。
- 技術部が外部から見えにくい。
- 電子情報部門の必要性。
- ネットワーク室の維持。
- 若手の育成。
- 装置開発室と物理金工室の関係を改善すべき。
- 技術の継承
平成12年度から13年度は前述した6項目に付いて総合的に検討を行ない、電気電子情報技術班発足準備会を組織し、平成14年度から新たな班として電子情報技術班(仮 称)発足する提案を行なった。また、装置開発班と研究機器開発班の運営を平成14年度から一体化する提案を行ない、技術の継承に関わっては、もの作りネットワークの構築の提案をおこない、具体的な作業グループをスタートさせた。
3. 技術部組織の総合的な見直し
平成12年度から13年度は、前述した技術部が検討すべき課題に付いて技術部組織を総合的に見直し、電子情報技術に責任を持つ班の確立と、装置開発室と物理金工室の関係を整理し、各班の名称もあらため今後の理学部の教育研究に対応できる新たな体制で平成14年度からスタートすることを提案した。特徴的な提案の意義などを以下に記述する。
(1) 電子情報部門に責任を持つ班の確立
電子情報技術部門の必要性については、平成7年の外部評価でも指摘された点であり其の具体化が最重要課題であった。大学の教育研究において電子情報関係の技術は極めて重要であるが、現在の技術部組織においてはこの分野が欠けている。そこで、この分野の専門技術を持つ技術職員を新たに班として組織し、大学の教育研究活動に対して理学部技術部が一層大きい役割を果たせるように処置する事を目的に理学部全体の電子情報に関連する技術に責任を持つ班として確立させることとした。
(2) 装置開発室と物理金工室の運営の一体化
これまで理学部には教育研究に必要な機器、装置を開発する装置開発室(装置開発 班)と物理金工室(研究機器開発班の金属工作部門)があり、各室では個別に運営を行ない、互いに切磋琢磨し独自の技術を蓄積し技術力を向上させてきた。しかし多くの共通点があること、また外部から見れば各室の違いが見えないことから各室の優れた点は確保しつつ技術の開発継承を更に向上させるために運営を一体化させ、班の名称も班名を第一装置開発班、第二装置開発班とわかり易くすることとした。
(3) もの作りネットワークの構築
技術の継承を行なうには、その一つとして名古屋大学内及び理学部技術組織の活性化させ、技術交流、人事交流が必要である。その準備として、学内でもの作り技術職員交流グループを発足させ提案を行なった。グループの発足は、名古屋大学の技術職 員問題懇談会小委員会の提起している「技術職員のネットワーク構築を積極的に推進する」という方向を積極的に受け止める具体的な提案でもある。
もの作りには、装置、試料、プログラムなど様々な形態があるが、当面理学部として金属工作を主とした装置作りに関する、学内の技術職員交流グループを組織することが可能であると考え、実現のための作業グループが発足した。
資料:研究技術開発センター
理学部技術部概算要求書
平成8年1 2月 技術将来計画委員会
1、 設置の目的
研究技術開発センター(仮称)は、名古屋大学理学部・大学院理学研究科およびそれと共同研究を行う諸研究機関における実験研究と教育に必要な独創的な機器装置の開発・試作を行うことを目的とする。
2、設置の趣旨
これまで名古屋大学理学部技術部は、限られた数の技官が如何に高い質の研究用装置の開発を如何に効率的に実現するかさまざまな先導的試行を行ってノウハウを確保 できた。また、大学院生や研究者への教育実習を行い、独創的な研究者育成への支援を行ってきたが、大学院重点化に伴って、大学院生数は5年前の1.5倍と急増しており、その改革に対応した理学研究や教育の基盤のいっそうの確立が急務である。技術部は、これまでの実績を踏まえて、大学院重点化に対応した研究支援体制を確立しようとするものである。このような研究支援の実績をもつのは国立大学では名古屋大 学理学部技術部がほとんど唯一の拠点であるので、これを確立していくのは我々の義務と責任である。
1)独創的な装置の開発
理学における最先端の実験研究では、市販の装置をそのまま用いてできるものは極めて限られており、研究を支えるべく求められる技術水準は市販のレベルをはるかに越えた過酷なものである。名古屋大学技術部では、宇宙科学研究所、高エネルギー物 理学研究所、分子科学研究所などのほか、他大学の学部とも研究者と密接な連携のもとで新しいアイデアや発明を既存の技術情報を集約し、不可能にみえる過酷な研究上の要求に応える独創的な研究技術を開拓してきた。大学院重点化に伴い、理学研究における先導的研究技術開発要求の質と量は益々上がるので、これに応えることが必要である。独創的な研究を支えるためには、理学部にこのような開発部門を整備し、独自に開発できるようにする必要がある。すなわち、本センターでは、超精密・超高真 空・超低温・電子情報処理等の独創的な装置開発の要請に応じる態勢を整えることをめざしている。
2)開かれた施設としての意義
センターは、理学部の施設としての設置を要望するものであるが、本学の他部局による利用、例えば、医学部、農学部など開発設備の乏しい研究所・学部からの要望にはある程度応じることができる。また、先端技術開発部門との技術および人事交流も行うことができる。さらに、本センターに設置する各設備については、理学部全体はもとより、学内・学外の各部局からの利用も容易に行えるようにする。
3)技術開発テーマの公募
理学部内で技術開発テーマを公募し、超精密・超高真空・超低温等の基礎技術を統合した独創的なアイデアの応用技術開発を研究者とともに行う。
4)大学院生及び研究者への装置開発技術の教育実習
理学の実験研究では、教官や大學院生は、実験開発技術の基礎を身につけることが不可欠である。本センターは、このような装置開発技術の教育実習の場とするものである。
3、人員要求
本センターの構成は下表による。ここで※印は併任、△印は振替を表わす。
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内訳 |
教 官 | 行 一 | 合計 | 備考 |
教授 | 助教授 | 助手 | 技官<>TH> | 事務官 |
センター長 | 1※1 | | | | | 1※1 | 差引 |
基礎技術開発室 | | | | 10△7 | | 10△7 |
極限技術開発室 | | 1※1 | 1※1 | 4△2 | | 6△2※2 |
電子情報技術開発室 | | | | 4△2 | | 4△2 |
事務室 | | | | | 1 | 1 |
| 3※3 | 18△11 | 1 | 22△11※3 | 8 |
4、施設要求
区 分 | 面積u | 備 考 |
極限技術開発室 | (1)超精密技術 | 170 | 460 | 基礎技術の確立 基礎技術の開発 基礎技術の教育実習 クリーンルーム(超精密) |
(2)超高真空技術 | 60 |
(3)極低温技術 | 60 |
(4)精密測定・分析 | 170 |
極限技術開発室 | (1)応用技術開発1 | 90 | 150 | 技術開発テーマの公募(研究者+技官) 技術部独自の応用技術開発 |
(2)応用技術開発2 | 60 |
電子情報技術開発室 | (1)電子回路室 | 170 | 90 | ハードウェアの開発 ソフトウェアの開発 |
(2)情報処理技術 | 80 |
設計室・会議室 | 90 | |
セミナー・教育実習室 | 120 | |
事 務 室 | 60 | |
合 計 | 1050 |
5、設備
| 品 名 | | 要 求 額 (千円) |
特 別 設 備 費 | 超高真空排気システム | 一 式 | 25,000 |
超低温生成システム | 一 式 | 20,000 |
超精密加工 | 一 台 | 45,000 |
超精密測定システム | 一 式 | 35,000 |
走査型電子顕微鏡 | 一 台 | 40,000 |
一 般 設 備 費 | NC工作機械 | 4 台 | 80,000 |
C A D | 一 式 | 20,000 |
測定・計測システム | 一 式 | 20,000 |
| 合 計 | | 285,000 |
6、施設平面図
研究技術開発センター平面図 |
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