装置開発班


         増田忠志、石川秀蔵、鈴木和司
         鳥居龍晴、小林和宏、松下幸司
         三輪治代美


  1. 概要

  2. 活動状況
    2−1 利用状況
    2−2 研究者への技術指導
    2−3 技術成果
    2−3−1 NC機械使用状況・技術開発・大型装置の内容
    2−3−2 NC旋盤の加工事例
    2−3−3 NCフライス盤の加工事例
    2−3−4 現在開発中の装置等
  3. 将来計画と今後の課題
    1. 装置開発室の現状と要望についての意見
    2. 新研究科について
    3. 装置開発班と研究機器開発班との関連と技術部について

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1、概要



 装置開発室は現在、スタッフ7名で理学部・環境学研究科・地球水循環センター・ 年代測定資料研究センター・化学測定機器センターにおける研究・教育に必要な装置 の開発、試作、製作を行っている。当装置開発室では、市販になく、かつ単なる外注 では出来ない新機軸の装置、あるいは研究現場でしかできないような独創的な機器の 開発に重点を置いている。図1は、装置開発室の業務内容を示す。業務の70〜80%程 度は、技術開発や大型装置である。また、単に装置試作の依頼を受けるだけでなく、 技術相談に応じたり、研究者を対象とした工作実習も積極的に行っている。また、 2000年度には運営委員会において、将来構想を検討した。


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2、活動状況



2−1 利用状況


 表1は部局別の受付件数および作業時間を示す。表2は、部局別の年間外注費を示 す。装置開発室では、研究現場でしか出来ないような創造的な装置の開発・試作に重 点をおいており、限られた人数で出来るだけ広範囲な仕事を迅速にするため、原則と して外部の業者に依頼できるものは外注している。その額は年間1000万〜2000万円に のぼり、これは、企業ベースのコストに換算し、1億〜2億円程度の生産性をあげて いると考えている。

2−2 研究者への技術指導


 当装置開発室では、研究者向けの工作実習を毎年4回実施している。表3は、学科 別の工作実習受講者数を示キ。年間では、17名程度の受講者がある。


2−3 技術成果



2−3−1 NC機械使用状況・技術開発・大型装置の内容


 装置開発室では、1995年度に超精密CNC旋盤(写真1)が導入されたのをはじめ、 1996年〜2000年度までに、表面あらさ計(写真2)・NC旋盤(写真3)・NCフライス 盤(写真4)・非接触3次元測定器(写真5)が導入された。これらの先端機械や測 定器により、技術部の装置開発部門における超精密技術の開発基盤ができた。表4は 技術開発や作業時間100時間以上の大型装置の内容を示す。近年は、超精密設備の導 入により、超精密加工の技術開発が多くなっている。

写真1 超精密CNC旋盤
(理研精鋼UPL-1)
写真2 表面あらさ計
(タリサーフ)
写真3 NC旋盤
(ワシノ機械 LN-32N)
写真4 NCフライス旋盤
(大隈豊和、FMV-30)
写真5 非接触3次元測定器
(三鷹光器、NH-6)

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2−3−2 NC旋盤の加工事例


写真6は、1997年度に導入されたNC旋盤による加工事例を示す。

写真6a 衝突実験用弾丸
(φ30-0.03アクリル製)
(地球惑星科学科)
写真6b ミリ波集光用テフロンレンズ窓
(R120球面)
(化学科)
写真6c 赤外集光用回転楕円面鏡ミラー
(A5056製)
(化学科)
写真6d 高周波電子銃空洞部品
(A5056製)
(物理学科)
写真6e X線望遠鏡用ミラーの
熱成型金型のテーパ面
(A5056製)
(物理学科)
写真6f スピン偏極電子銃電極
(SUS304製)
(物理学科)
(研究機器開発班作成)

2−3−3 NCフライス盤の加工事例


写真7は1998年度に導入されたNCフライス盤による加工事例を示す。

写真7a 高周波電子銃空洞入射口の曲面加工
(A5056製)
(物理学科)
写真7b キャビティのO-リング溝加工
(A5056製)
(物理学科)
写真7c 電波観測用クロスガイドカプラ
    十字結合孔
(C3560製)
(物理学科)
写真7d レプリカフォイルミラー切断装置の
    平面度・曲率精度測定
(SUS304製)
(物理学科)
写真7e 中間赤外線高分散分光用
    Immersion Gratingの開発
(GeのELID鏡面研削)
(環境学研究科)

2−3−4 現在開発中の装置等


 写真8(a)〜(h)は、現在開発中の装置を示す。

8−(a) すばる望遠鏡用中間赤外線
高分散分光装置(IRHS)の開発
(環境学研究科)
8−(b) X線望遠鏡用
レプリカマンドレルの開発
(物理学科)
 すばる望遠鏡第二期観測装置の中間赤外高分散分光装置(IRHS)は、低温の暗黒星雲中に存在する分子の振動遷移等を観測する。分光装置は全体を30K、検出器を5±0.1Kに冷却する必要があり、これを高分散分光測定するためには、大型で信頼性の高い極低温クライオスタットの開発が必要である。 装置の仕様:(1)波長10μm帯にて分解能:R=λ/Δλ=200000 (2)光学系の上端でのXYZ軸の誤差=60μm以内 (3)到達真空度5x10-4Pa 、冷却時間は72時間以内
 X線観測による銀河団の構造と進化を究明するため、X線望遠鏡を使用する。 X線望遠鏡はレプリカ法で成型した0.15mmのアルミフォイルを数百層の同心円に並べ形成される。レプリカフォイル用マンドレルは、X線望遠鏡ミラ−を熱成型させ、金等の膜をコ−ティングさせる型である。この型が出来ることで、高分解能のX線望遠鏡の開発が期待出来る。型のサイズは、直径117mmから392mmまで46種類必要とされるが、今回試作として以下のものを製作した。  直径は189mm、材質はA5056にNi-Pメッキを施したものとスタバックス(マルテンサイト系ステンレス鋼)である。鏡面の精度は形状精度でテ−パ−部の直線性が6μm以下であり、表面粗さは Ra 0.5nm以下を要求されている。
8−(c) 原子核乾板飛跡解析用
    高速ピエゾステージの開発
(物理学科)
8−(d)生物発光測定装置
(生物学科)
 光学顕微鏡により原子核乾板の素粒子飛跡を高精度に測定してタウニュ−トリノの反応解析をおこなう。装置は新たに開発した高速解析システムのために市販のピエゾ素子を使用して対物レンズを高速駆動させるものである。
 生物の体内時計を解析するために、遺伝子操作をした発光シアノバクテリアの概日性リズムの自動測定を行う。 測定装置は大型回転テーブル上の発光試料をCCDカメラで自動連続測定するものである。
8−(e) 高周波電子銃の開発
(物理学科)
8−(f) メタルボンド超砥粒砥石による
     ELID研削加工の基礎技術開発
(環境学研究科)
 素粒子に関する研究では電子と陽電子を非常に高いエネルギ−を与えて正面衝突させ、その状態を観測することで粒子等の発見が期待されている。 この装置は、電子及び陽電子をつくり出す電子銃の試作モデルである。装置内部にマイクロ波(3.0GHz)を供給し、半導体カソ−ド上に電界強度100MV/mを実現させ、レ−ザ−光を照射することにより、高輝度電子ビ−ムを取り出せるように設計されている。
 形状が複雑なため、4個の部品に分け超精密加工後組み立てる。 電子銃の形状精度は±5μm以下であり、各部品の表面粗さはRa 0.05 μm以下にする必要がある。
 電解インプロセスドレッシング(ELID:エリッド)研削法は、理化学研究所素形材工学研究室において開発された鏡面研削加工技術である。シリコン、セラミックスやガラス、フェライト、高硬度鋼材、複合材料など、硬質かつ難加工性を持つ機能性材料に対して、高能率かつ高品位に鏡面加工を実現できる新加工技術である。
 装置開発室では中間赤外線高分散分光用Ge製Immersion Gratingの開発(写真7(e))のため、ELID鏡面研削の基礎技術開発を行っている。
8−(g) 電波望遠鏡用
       受信機の開発
(物理学科)
8−(h) 高温レーザー蒸発
   炭素ナノ物質生成・質量分析装置
(化学科)
 電波天文学において短ミリ波望遠鏡により宇宙電波を観測し、星の生成を解明している。電波受信機は雑音温度を下げるため超伝導SIS素子を使用している。受信機(ミクサマウント)はこの素子を正確に埋め込まなければならない。また、感度調整をするためのバックショ−ト用の溝を有する。全体の寸法は、波長帯により導波管寸法及び溝間隔が異なり、かつ素子の寸法にも影響される。
 この受信機は100GHz帯(1.27×2.54の導波管)で使用される。この受信機には加工精度を良くしなおかつ再現性の良い加工が求められる。
 ナノチューブやフラーレンなど炭素ナノ物質はナノサイエンス・テクノロジーを具現化する鍵として基礎面からも応用面からも注目されている。この装置は、炭素ナノ物質を生成する高温レーザー蒸発装置と縦配置の飛行管を用いた飛行時間型質量分析装置を直結したシステムであり、生成物を大気にさらすことなく、質量分析できる特徴を持つ。この結果、ナノチューブの生成前駆体や、不安定な金属フラーレン類およびC36などの通常は生成できない極小フラーレンを生成・分析する事ができる。

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3、将来計画と今後の課題



 装置開発室運営委員会では、2000年度に装置開発室の将来のあり方についての検討 を行った。これは、最近の新研究科の新設や技術部組織の見直しなどを含めて、今 後、装置開発室がどうあるべきかを議論したものである。ここでは、その時の意見と 1986年度に開催された将来計画委員会の要約を紹介する。
 装置開発室では、1986年度から2年にわたり将来計画委員会を開催した。その後理 学部の構成員を対象に、シンポジウム「これからの理学部金工室」を開催した。そこ では、日常のサーピス業務と共に「研究者と協力して新しい実験装置の開発や新技術 の開発研究を行う」という開発的側面を重要視すべきであることが理学部全体の合意 として形成された。また、大学における技術開発の重要性として、基盤技術の幅広さ とその基盤技術をいかに合理的に組み合わせ複雑でより高次な機能を持つ実験装置に 仕上げるかという手法が大切であることも指摘された。

 今後の課題としては、以下のような指摘がなされた。

  1. メカトロを始めとする新技術の導入の必要性
  2. Technical Consultant 的な集団としての発展をめざし、実験・観測の内容を 理解し装置の設計、修理、外注等について技術的評価や判断をし、一部その研究に参加できる様な力をつけるように努力する必要
  3. 他学部、他大学の工作室との技術交流や人事交流を計画的に進める。
       人事交流は6年程前から分子科学研究所の装置開発室と継続的に行っている.

 現在、大学をとりまく情勢は大きく変化しつつあり、今後は理学部技術部のみでは なく、全学を視野に入れた将来計画を考える必要に迫られている。2000年度に開催さ れた将来委員会では、以下について議論したのでその意見を紹介する。

  1. 装置開発室の現状と要望
  2. 新研究科について
  3. 装置開発班と研究機器開発班との関連と技術部について


(1) 装置開発室の現状と要望についての意見


(2) 新研究科について


 2000年4月より、新研究科の環境学研究科が発足した。理学部から地球惑星学科や 附属地震火山観測研究センターが入ることとなった。また、理学部以外で装置開発室 を利用してきた大気水圏科学研究所が環境学研究科と地球水循環研究センターに分か れることが決まった。新研究科構想は、今後も情報科学・生命科学・材料科学・物質 科学系と計画されており、研究科の再編と装置開発室に関しての意見は以下のようで ある。

(3)装置開発班と研究機器開発班との関連と技術部について



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