極限基礎技術班
五藤俊明 物質理学専攻
奥見正治 素粒子宇宙理学専攻
渡部豊喜 素粒子宇宙理学専攻
柴田美智代 素粒子宇宙理学専攻
水野晴夫 物理学科学生実験室
池田晃子 年代測定総合研究センター
小島 久 アイソトープ総合センター
近藤真理 アイソトープ総合センター
1.概要
極限基礎技術班は、物質理学専攻・素粒子宇宙理学専攻・物理学科、年代測定センター及びアイソトープ総合センターの研究室・施設と密接に繋がっており、スピン偏極電子源の開発とスピン偏極電子を用いた高エネルギー実験、生体膜の高次構造形成の解明、赤外線天文衛星ASTRO-F(IRIS)の開発、惑星間空間プラズマ解析、原子線スペクトル・レーザー光学、核磁気共鳴・超伝導等の13テーマにわたる学生実験、加速器質量分析計を用いた新年代測定法の開発研究、アイソトープの利用法・測定法・廃棄物処理法等の新技術開発研究など、研究目的・計画を実現するために研究者、院生、学生と共に実験装置の設計・開発、シミュレーション、装置の製作、実験、教育、データの収集などに成果をあげてきた。
2.技術業務
- 電子・陽電子衝突型線形加速器(JLC)に用いる 200 keV スピン偏極電子源の設計製作及び高エネルギー加速器研究機構やヨーロッパ原子核研究所と高周波スピン偏極電子銃の共同技術開発。超高真空技術・超清浄表面作成技術を用いた直流高電界 試験装置による電極表面の評価実験及び電界放出暗電流削減実験。スピン偏極電子ビーム取り出し用半導体フォトカソードの開発。
写真 スピン偏極電子源3号機 |
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- 赤外グループではASTRO-F赤外線衛星計画において、極低温読み出し回路設計及び開発、搭載用電子回路開発及び評価を担当している。
極低温読み出し回路開発では、これまで検出器信号は常温部(300K)または高温ステージ(約70K)と呼ばれる温度ステージをおきJFET(接合型トランジスタ)による読み出しを行ってきた。これは1個の検出器に最低1個のトランジスタと3〜5本程度の配線を必要とする。しかし2次元検出器開発に伴いこれまでの手段では対応できないため、まったく異なる手法として極低温読み出し回路の開発に着手した。世界的に見て2〜3例の開発情報があるのみで容易でない。しかし、われわれは半導体プロセスメーカーの協力を得ることで、4°Kにおいて増幅率約300倍、消費電力10μW、入力等価雑音電圧3μV/√Hz@1Hz程度という性能を持つOP-AMP開発に成功した。このOP-AMPを用いることでCTIA(電荷積分バイアス補償形読み出しアンプ)読み出し回路開発に一定の評価が得られ、評価試験を行なっている。
搭載用電子回路開発及び評価では、ASTRO−Fには近・中間赤外線検出器と、遠赤外線検出器の2つが搭載されますが、検出器を駆動するための常温エレキ部も必要である。現在この常温エレキもFM(フライトモデル)が完成しており、搭載機器として要求される各種の試験を行っている。ここでは、搭載エレキの設計および動作試験を行っている。
ASTRO-F 完成予想図 | 遠赤外線検出器読み出し回路図 | 遠赤外線検出用6インチ シリコンウェファの拡大図 |
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- 人工衛星による観測で得られた惑星間空間プラズマのデータや地上観測の地磁気データなどを合わせて解析目的に応じて種々のデータプロットを作成するためのプログラム作成、改良。データ取得や整理を簡便化するためのプログラム作成。
- 物理学生実験の実験装置の開発・実験内容の改善。学生実験解説書の改訂及び電子化。成果の公開。
- 加速器質量分析計2号機の本格運用、試料調製のための実験室拡充と実験機器の整備・増強。センター第二実験室における放射線安全管理。利用者への実験指導及び安全指導。
- クライオ透過型電子顕微鏡、EDX走査型電子顕微鏡による生体、金属などの形態・微細構造解析・組成元素分析、表面分析評価。クライオAFMの開発。試料作製技術の開発。
微繊毛膜の球殻状多層構造の 電顕画像(凍結割断レプリカ) | LHCの結晶の氷包埋法による電顕画像 |
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- アイソトープの利用法・測定法・廃棄物処理法等の新技術の開発。センター内の放射線源の管理、放射線業務従事者の被曝管理、環境放射能の制御及び関連部局と連携した全学的放射線管理体制の整備維持。全学安全保障委員会からの委託による全学 に対する法定の教育訓練、高レベル標識実験、核種分析、新しい放射線計測法等の高度技術に関する知識向上の普及。学部学生のアイソトープを取り扱う教育実習。
- 物理教室の ( DNS ,Web ,mail ) サーバー管理。経理データのソフトに関する改良などの技術的管理。技術部の Web サーバーの立ち上げ、管理、データ更新。物理学教室のネットワーク関係業務。物理事務室 subnet環境の設定・管理。router machine の管理。理学部ネットワーク室の基幹サーバーマシーンの維持管理と、関係するネットワーク環境(主に、理学部事務に関係する)の管理。