FNAL(フェルミ研究所)見聞録


 短い期間でしたが、FNALでの経験は大きな財産となりました。
 山之内先生のガイドで所内を詳しく見学できたこともあり、ここでみなさんにFNALの様子を紹介します。

 当然、このHPに書いたことは僕の私見であり、何らかの公式な承認を得たものでないことを断っておきます。

 フェルミ研究所はアメリカ合衆国シカゴ郊外にあります。あたりは湿地帯で、見渡す限り平らの広大な土地にあって、加速器の中央部分ではアメリカバイソン(バッファロー)を飼育していたり、鵞鳥があたりを闊歩していたりと、のどかな風景が広がっています。
 この写真はフェルミ研究所の中心にあるサンライズビルで、全ての管理機能がここに集中しています。研究者のオフィスもここにあります。

サンライズ・ビル

 周囲には池があり、手のひら大のブルーギルがいる。池と池をつなぐ水路には大形のメダカのような魚(約50mm)が泳いでいる。

周りの池研究者用の宿泊施設

 移動用の車、これがないと仕事になりません!
 宿舎とサンライズビル、カウンターホールまではそれぞれ数Km離れており、歩いていくとそれだけで数時間かかってしまいます。FNALが巨大加速器であることを実感します。
 研究所の中にバッファローの牧場があります。一度途絶えたバッファローを再現し、種の保存として飼育しています。飼育の人たちを慰労するため、一年に一回バッファローの焼き肉パーティーがあるとのことですが、どんなステーキになるでしょうか?

 ネイティブアメリカンと共存していたバッファローは、欲に目のくらんだ白人達が毛皮をとるためだけに皆殺しにされ、先住民を飢えさせた悲しい歴史があります。そして結局は、ネイティブアメリカンをことごとく追い払い、彼らを窮地に陥れ、滅亡させることになりました。
 この歴史はどのような償いをしても消し去ることはできません。

移動用の車バッファローの牧場

 次に、フェルミ研究所の研究施設を紹介します。

 サンライズビルの近くにはストックルームや工場があります。やや離れたところには加速器に液体ヘリウムを供給する液化センターもあります。
 加速器の検出器やビームライン上には様々な研究棟が並んでいます。我々はニュートリノビームのHILという建物でした。

 写真のような工作サイトは各研究サイトに隣接されている他、中央工作室がサンライズビルの地下にあります。
 技術部門は非常にしっかりとしているという印象をもちました。

中央工作棟の大型工作機械と放電加工機
高精度のボーリングマシン5軸マシニングセンタ

 巨大加速器を運転するには大量の液体ヘリウムが必要です。  FNALには常時液体ヘリウムを供給するための巨大なヘリウム液化機(世界一と言っていた)と、三交代制のオペレーターチームとメンテナンスチームが整備されています。
 液化装置や純化装置も全て予備が準備され、何かトラブルがあっても瞬時に予備系統に切り替えられるとのことでした。

ヘリウム純化装置世界一の液化装置

 FNALと言えばトップクオークを発見したことで知られています。それがこの写真にある、CDFと呼ばれる素粒子検出器です。  4~5階建てのビルに相当する高さの空間に、巨大な検出器がおかれていました。ちょうどこの時は新しい実験のために、内部のディテクター群を新しいものと交換するさぎょうをしていたので、内部の詳細まで見ることができました。

世界で始めてトップクォークを検出した強大なCDF
5階の窓から見下ろす高さです。柱のサインはこの研究に参加した人々のもの
CDF検出器の接続部分から見た加速器の端



 FNALはトップクオーク検出の次に大きな実験を用意しています。こうした研究所は常に新たな発見を求めて新しい実験が準備され、取り組まれていきます。

新しい検出器D-0

 私たち以外にも、日本人グループが活躍している実験があります。それがK-Tevです。この実験はビームラインが非常に長く、全長150mもあります。従って、どこから見学しても、装置の一部分しか見ることができないので、何だかわからないといった感じです。


 開発センターでは新しい世代の観測装置の開発が行われています。これはシリコンディテクター開発研究室にある巨大な三次元測定器です。



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