miniOPERA実験主検出器の製作
2006.3.10 by KAWAI
miniOPERA実験は現在FNAL(フェルミ研究所)にて実施しています。
miniOPERA検出器は名古屋大学で組立・調整を行い、そのまま梱包してFNALに送り、現地にてインストールしました。miniOPERA検出器は一度海を渡ったとは思えないほど損傷もなく、インストール作業は順調に進んだようです。
現在、ビーム照射中です。この下に、最近のminiOPERA検出器の様子です。ライブカメラにて名古屋の研究室から見たものです。
miniOPERA実験はOPERA実験(長基線ニュートリノ振動実験)の前に行うもので、大規模なOPERA実験の予行演習&観測装置の性能試験をかねた実験で、米国シカゴ郊外のフェルミ研究所にて行います。
DONUTS(τニュートリノ直接検出実験)で用いたファイバートラッカーを再利用してニュートリノ反応を検出し、OPERA験用に開発した新しい検出装置のオペレーションと性能を確認します。
OPERA用検出器は原子核乾板を主体としたもので、大量の原子核乾板を手際よく処理する必要があります。miniOPERAではOPERA実験と同程度のオペレーションを行うことによって問題点の有無を調べるとともに、ニュートリノ反応の大統計での詳細解析をおこないます。同時に、この実験は、フェルミ研究所にとってはニュートリノビームラインの性質を詳しく測定できるというメリットがあります。
例えば、miniOPERAでは地下深く(100m程度)に検出器を搬入し、原子核乾板と鉛板でできたブロック(ブリック)の製作や現像を実験現場の至近距離で実施するなど、OPERA実験で想定される状況を再現します。
金工室はDONUTS実験における検出器に関わる技術開発を行ってきたので、その検出器の一部であったファイバートラッカーを新たな実験のビームライン上に設置するための技術的な問題の解決にあたります。 以上、2004年12月現在
miniOPERA実験主検出器の仕様
ファイダートラッカーの改造
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miniOPERA検出器の仕様
miniOPERA実験の検出器に要求される機械的要素は以下の通りです。この要求に合うように、2005年1月末にこれらの検出器およびリフレッシュルームを日本で製作し、フェルミ研究所に向けて発送しなければなりません。
機械的に厳しい要求を、短期間に実施することが求められています。
- 強磁性体を使わない。
検出器付近は強い磁場となっており、この磁場を乱したくないために必要です。
- 検出器の下の空間を原子核乾板のリフレッシュルームとして活用する。
このリフレッシュルームは遮光と断熱が必要であり、屋根にファイバートラッカーなどの検出器約1トンが乗ります。さらに、屋根で原子核乾板取替えなのど作業をする可能性があるので、安全のため、手すりなどが必要です。
- 3年以上にわたって、検出器の位置が0.1mm以上動かないこと。
ファイバートラッカーで得られた座標をもとに原子核乾板に記録された素粒子反応を解析することから、それぞれの位置関係が実験中(約3年にわたって)動いては困ります。したがって、これらの位置関係をしっかり保持する機構としなければなりません。
- ファイバートラッカーの隙間に自由に原子核乾板ブリックを配置でき、交換できること。
ニュートリノ反応を見つけたとき、それに相当する原子核乾板を取り出して解析するという手法を用いますので、原子核乾板のブリックを自由に取り替えられなければなりません。
ファイバートラッカーの改造(その1)
ファイバートラッカーのレイアウトをminiOPERSの仕様に合うように改造・調整します。
今回は、高エネルギー実験室のクレーンを借りて、ファイバートラッカーを支えている2本のシャフトを長いものに交換し、ファイバートラッカーどうしの間隔を空けて、その間にECCモジュール(原子核乾板と鉛板を交互に組み合わせてニュートリノ反応を検出する部分)を入れられるようにします。
作業は、前日にクレーンのある部屋まで運び込み、ファイバートラッカーをクレーンで持ち上げ、シャフトを交換した後、元のフレームに戻しました。この作業は24日午前10時ころより始め、午後4時には終了しました。
以下の写真は、これらの作業のものです。
仮組みしたファイバートラッカー | ファイバートラッカーの運び出し | クレーンにて吊り上げ | 懸垂軸の交換 | クレーン作業終了 |
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