新広視野グリズム分光撮像装置(WFGS2)

 物理Z研 M1 上原麻里子 

1. はじめに
 現在Z研で広視野の分光撮像装置を製作している。この装置は分散素子のグリズムを出し入れすることで分光と撮像ができる設計になっている。また、3列のフィルターホイールを持ち、1列目、2列目にはそれぞれ4〜5個のフィルターを、3列目には分散の違う2個のグリズムを取り付け、観測に応じて使い分ける。今回このフィルターホイールの駆動回路を電子情報技術室に依頼したため、理学部技術研修会で発表することになった。

2. 装置

2-1 目的
 従来の分光器は、単スリットかもしくは視野(5′×5′程度)が標準であった。本装置は広視野(11′×11′)での撮像と分光を目的とする。分光ではグリズム低分散(R〜1000)およびVPHグリズムを用いた中分散(R〜4000)の分光を予定している。星形成領域における輝線星の探査や銀河のドップラー速度の測定に利用できる。

2-2 仕様
 表1に装置の概要、表2にグリズムの仕様を挙げる。また図1は光学系で、上は撮像モード、下は分光モードで視野の中心の光を分光した様子。望遠鏡で集めた光をコリメータ系で平行光にする。平行光はその後フィルター、グリズムを通った後カメラ系で収束する。 図1の四角く囲った部分にフィルターホイールが3枚入る。分光時には3枚目に分散素子を入れる。


表1 装置概要

波長域  390〜970nm
視野(スリットなし)  11.5′×11.5′
装置F値  F/6.6
検出器  CCD 2048×2048 pixel、24μm/pixel
分散素子  グリズム
観測場所  ハワイ大学2.2m望遠鏡


表2 グリズムの仕様

  溝数  分解能R  分散 
低分散グリズム  300本/mm  1000  0.28nm/pixel 
  VPHグリズム  1200本/mm  4000  0.07nm/pixel 




図1 光学系


3. フィルターホイール


図2 フィルターホイール



図3 フィルターホイールの回転方向
3-1 ホイールの仕様
 材質はアルミでφ48mmの穴が6個空いて いる。これを3枚作り、それぞれにブロードバンド フィルター4枚、ナローバンドフィルター5枚、 グリズム2個を取り付ける。図2は金工実習で 製作を始めたフィルターホイール1枚目。

3-2 フィルターホイールの駆動
 フィルターホイールは外周にギア溝を切り、ウォームギアで駆動する。駆動の制御は、制御用コンピューターから駆動回路へ命令を送り、駆動回路がモーターにパルスを送る。位置決め精度は、開口部で±1mm、角度にして30′必要。理由は光束がフィルターホイールを通るときのケラレと分散素子の傾きからである。ウォームの噛み合いに遊びがあるためホイールは一方向に回転させ、隣のフィルターへの移動は逆方向に回転させてから順方向に直す。(図3)

4. 最後に
 今年度、電子情報技術室ができて早速利用させてもらった。大学の外に発注するのと違い、情報をやりとりしながら製作していきたい。分光器は現在光学系が決定し、機械設計を進めている。今年10月にはファーストライトを迎える予定である。早く望遠鏡につけ、天体のデータ取得から解析まで到達できればと思っている。


図4 WFGS2完成予想図


開発スケジュール
2003年3月  レンズセル設計製作
2003年5月  トラス構造設計製作
2003年7月  スリット、CCD取付部、フィルター・グリズムホルダー製作
2003年8月  フィルターホイール駆動部の製作と駆動
2003年9月  WFGS2組み立て、調整
2003年10月 ファーストライト



元原稿 Word file