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楽しい LINUX

花輪 知幸 (素粒子宇宙物理学専攻)

LINUXとは

最近話題の OS である LINUX (リナックス) について紹介する。 LINUX は UNIX と呼ばれるワークステーション用基本ソフトウェア (OS=Operating System)のひとつである。UNIXの基本性能は全て揃って いる上に、(Pentiumなど86系のCPUを登載した)パーソナルコンピュータ で作動する。LINUXは無償で配布(フリーウェア)されているので、古いパソコンに インストールすれば、特別な出費なしにUNIXマシン(=ワークステーション) ができる。新品のパソコンでもワークステーションよりは相当に 安いので、「パソコン価格でワークステーションの機能」が実現 できる。機能の高さと価格の低さによりLINUXの評価は高まり、現在はそれ専門の 日本語月刊誌が数種類出版されるほどになっている。

人気が高まるにつれてLINUXの機能も充実してきた。X Window 機能が充実 してきて、コマンドをタイプしなくても、マウスだけで多くの操作ができる アプリケーションも揃ってきた。またLINUXのインストールも簡便化され、 アプリケーション類も本体と一緒にインストールされるタイプも普及してきた。 本講演では「楽しいUNIX」という標題で、マウスの操作だけで使えるLINUXの 便利な機能を紹介する。LINUXもWindowsやMacと同様に使いやすいOSである ことを理解していただければ幸いである。

本講演では実演するLINUXはLinux MLD IIIというMedia Lab. から発売されて いるものである。LINUX MLD IIIは技術部で購入しているので、興味を持った 方は一度試していただきたい。なお、実演に使用したパソコンはSony VAIO PCG-505RSである。



ログインとログイン時の画面

LINUXの使用を開始するには、ログインと呼ばれる手続きが必要である。 ログインは、利用者名(アカウント)とパスワードをタイプすることによって 完了する。これは利用者が誰であるかを特定する作業で、プライバシー を保護することを目的としている。Windowsにも同様の機能があるが、 LINUX (UNIX)にほうがこの機能において優れている。

LINUX MLDではログインすると、fvwm ボタン(図1参照)が画面に 現れる。このボタンにはxclock (時計)、CPUモニタ、Desktop (画面 の選択)の他に各種アプリケーション(kterm, xfm, Mule, mocalc, gview, Netscale, kill) の起動用アイコンがついているす。たとえば、 xfmをクリックすると、図2のファイルマネージャが現れ、マウスに よりファイルを選択できる。 表1はfvwmボタンで選択できるアプリケーションの機能のまとめである。

kterm 端末(コマンド入力)
xfm ファイルマネージャ(図2)
Mule エディタ
mocalc 電卓
Netscape Web ブラウザ

表1 fvwmで起動できるアプリケーション

図1 fvwm ボタン。各種アプリケーションの起動に使う。

マウスで起動できるアプリケーション

図2. ファイルマネージャ。

また、背景を左クリックすると、Utilities メニューと呼ばれる ボタン(図3)が現れ、より多くのアプリケーションを選択出来る。 Utilities メニューの右向き三角形は、さらに多くの選択肢があることを 示す。

図3. Utilities メニュー。

Utilities メニューから選択できるアプリケーション のうち、有用と思われるものを表2にまとめた。

名称 機能
Calculator 関数電卓
Magnifiying Glass 拡大鏡(虫眼鏡)
XPaint お絵かきソフト。手書き風の絵を作成し、 PostScript, GIF, JPEG といった各種フォーマットで格納すること ができる。起動させると、図4のWindowが現れる。
Desktops 壁紙(7種類)
Screen Saver スクリーンセーバー。一定期間入力がない時に画面に 現れ、画面が焼け付くのを防ぐ。最近は実用性より、娯楽性が高くなって いる。
Lock Screen パスワードによって他の人が画面を変更 できないように保護する。
Task Bar タスクバー。起動しているアプリケーションを 表示する。
Xeyes 目玉によってカーソルの位置を知らせる。Gamesの中から 選択して起動。
neko カーソル付近に猫が現れ、カーソルの位置を分かりやすくする。 ただし、実用性よりも、仕事疲れを癒す効果のほうが評価できる。 Gamesのひとつに分類されている。

表2 Utilitiesメニューから選択できる主なアプリケーション

表2にまとめたアプリケーションの中でもXpaintは利用価値が 高い。WindowsやMacの上で動作するIllustrator (Adobe) と 似たような機能を実現できる。楕円や長方形など簡単な図形 を描き、それに自由な色をつけることができる。同様に 直線や曲線も書ける。太さの決まった線だけでなく、エアブラシ 効果でスプレイで描いたような曲線も描ける。英文字や数字も書き込める。 作った絵は、GIF, PostScript, JPEG といったフォーマットで記録できる。 従って作った絵は、ワープロやホームページに貼り付けることができる。 図5はXpaintで作成した絵の例である。

図4.「お絵かきソフト」Xpaint。

図5. Xpaintの作品例。



コマンドで起動するアプリケーション

ワープロとして使用できる LATEX や、高級言語C の コンパイラなども、LINUX MLD III には標準で登載されている。 これらは kterm から表3にまとめたコマンドをタイプする ことにより起動することができる。

コマンド 機能
platex LATEX のコンパイル
xdvi LATEX のプレビュー
gcc C のコンパイラ
wish Tcl/Tk のインタプリタ

表3. コマンドで起動する主な言語。



まとめ

このようにLINUX MLD III は画面の見た目や機能、操作性において Windows に似ているので、Windows や Mac の経験があれば使い始める のは簡単である。使い方は簡単であるが、UNIXの機能は全て備わって いる。LATEX やC言語といったUNIXらしい機能も揃っている。 UNIXに興味のある方は、一度試していただきたい。


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On 19 Aug 1999, 16:02.